はじめに
本章では、Omeka Sを使ったキュレーション(展示の作成・編集)の方法を解説します。前章までにインストールしたIIIF Server・Image Serverモジュールを活用し、デジタルコレクションの展示公開、IIIFマニフェストの活用、Miradorを使ったビューア統合までの一連の流れを紹介します。
キュレーションとは
デジタルアーカイブにおけるキュレーションとは、収集・登録した資料を選定・整理し、テーマやストーリーに沿って展示・公開する作業のことです。Omeka Sでは、サイト機能とページブロック機能を組み合わせることで、多様なキュレーションを実現できます。
展示の作成
サイトの構成設計
展示を作成する前に、サイトの構成を計画します。以下は、IIIFチュートリアル用の展示サイトの構成例です。
展示ページの作成
- サイトの管理画面で「ページ」>「新規ページを追加」をクリック
- ページタイトルとURLスラッグを入力
- ページブロックを追加してコンテンツを構成
主要なページブロック
Omeka Sでは、以下のページブロックを組み合わせて展示ページを構成します:
アイテムショーケース(Item Showcase)
選択したアイテムをサムネイル付きで表示するブロックです。
- 「ブロックを追加」>「アイテムショーケース」を選択
- 表示するアイテムを選択
- 表示方法(グリッド、リストなど)を設定
ブラウズプレビュー(Browse Preview)
アイテムの検索結果をプレビュー表示するブロックです。アイテムセットやクエリで表示対象を絞り込めます。
HTMLブロック
自由なHTMLコンテンツを記述できるブロックです。展示の説明文やIIIFビューアの埋め込みに使用します。
<div class="exhibition-intro">
<h2>源氏物語絵巻の世界</h2>
<p>
本展示では、源氏物語の各帖に関連する絵巻資料を
IIIF対応ビューアで閲覧いただけます。
高解像度画像の拡大・比較が可能です。
</p>
</div>
IIIFコレクションの構築
アイテムセットを使ったコレクション
IIIF Serverモジュールでは、Omeka Sのアイテムセットに対してIIIF Collection(コレクションマニフェスト)を自動生成できます。
コレクションマニフェストには、アイテムセットに属する全アイテムのマニフェストが一覧として含まれます。
{
"@context": "http://iiif.io/api/presentation/2/context.json",
"@type": "sc:Collection",
"@id": "http://localhost:8080/iiif/2/collection/1",
"label": "源氏物語絵巻コレクション",
"manifests": [
{
"@type": "sc:Manifest",
"@id": "http://localhost:8080/iiif/2/1/manifest",
"label": "桐壺"
},
{
"@type": "sc:Manifest",
"@id": "http://localhost:8080/iiif/2/2/manifest",
"label": "帚木"
}
]
}
階層構造を持つコレクション
IIIF Serverモジュールでは、アイテムセットの入れ子構造を使って、階層的なIIIFコレクションを構築できます。
Miradorの統合
IIIF Viewersモジュールの活用
IIIF Viewersモジュールをインストールすると、アイテムの表示ページにMiradorビューアが自動的に埋め込まれます。
カスタムページへのMirador埋め込み
HTMLブロックを使って、特定のページにMiradorビューアを埋め込むこともできます。
<!-- Mirador 3の埋め込み例 -->
<div id="mirador-container" style="width: 100%; height: 700px;"></div>
<link rel="stylesheet" href="https://unpkg.com/mirador@latest/dist/es/src/index.css">
<script src="https://unpkg.com/mirador@latest/dist/mirador.min.js"></script>
<script>
const mirador = Mirador.viewer({
id: 'mirador-container',
windows: [
{
manifestId: 'http://localhost:8080/iiif/3/1/manifest',
thumbnailNavigationPosition: 'far-bottom'
}
],
window: {
allowClose: true,
allowMaximize: true,
defaultSideBarPanel: 'info',
sideBarOpenByDefault: false
},
workspaceControlPanel: {
enabled: true
}
});
</script>
複数マニフェストの比較表示
Miradorのワークスペース機能を使って、複数のマニフェストを並列表示する展示が可能です。
<script>
const mirador = Mirador.viewer({
id: 'mirador-container',
windows: [
{
manifestId: 'http://localhost:8080/iiif/3/1/manifest'
},
{
manifestId: 'http://localhost:8080/iiif/3/2/manifest'
}
],
workspace: {
type: 'mosaic' // タイル表示
}
});
</script>
外部サービスとの連携
他機関のIIIFマニフェストの活用
Omeka Sで生成したIIIFマニフェストは、他のIIIF対応ビューアやプラットフォームからも利用できます。
# マニフェストURLの共有
http://localhost:8080/iiif/3/1/manifest
# 外部のMiradorやUniversal Viewerで開く
# IIIF manifest URLを外部ビューアに渡すだけで表示可能
OAI-PMHによるメタデータ配信
OAI-PMH Repositoryモジュールをインストールすることで、Omeka Sのメタデータを他のシステムにハーベスト(収集)してもらうことができます。
テーマのカスタマイズ
展示に合わせたテーマ選択
Omeka Sには複数のテーマが用意されています。展示の内容や雰囲気に合わせて適切なテーマを選択します。
# テーマのインストール例(Bootstrap 5テーマ)
cd /tmp
wget https://github.com/nakamura196/omeka-s-theme-flavor/releases/download/v4.0.2/flavor-v4.0.2.zip
unzip flavor-v4.0.2.zip
docker compose cp flavor omeka-s:/var/www/html/themes/
docker compose exec omeka-s chown -R www-data:www-data /var/www/html/themes/flavor
CSSのカスタマイズ
テーマのCSS設定画面から、展示に合わせたスタイルの微調整が可能です。
/* 展示ページ用のカスタムCSS例 */
.item-showcase {
display: grid;
grid-template-columns: repeat(auto-fill, minmax(250px, 1fr));
gap: 20px;
padding: 20px 0;
}
.item-showcase .resource {
border: 1px solid #dee2e6;
border-radius: 8px;
overflow: hidden;
transition: box-shadow 0.3s ease;
}
.item-showcase .resource:hover {
box-shadow: 0 4px 12px rgba(0, 0, 0, 0.15);
}
公開設定
アイテムの公開・非公開
アイテムごとに公開・非公開を設定できます。準備段階では非公開にしておき、キュレーションが完了したら公開に切り替えます。
サイトの公開
サイト自体の公開・非公開も管理画面から設定可能です。
- サイトの管理画面で「設定」をクリック
- 「公開」のチェックボックスを切り替え
- 「保存」をクリック
まとめ
本章では、Omeka Sを使ったデジタルコレクションのキュレーション方法を解説しました。ページブロックを活用した展示の作成、IIIFコレクションの構築、Miradorビューアの統合、外部サービスとの連携まで、Omeka Sが提供するキュレーション機能の全体像を紹介しました。
本書全体を通して、Dockerを使ったOmeka Sのインストールから、基本操作、モジュールの導入、そしてキュレーションまでの一連の流れを解説しました。Omeka SとIIIFを組み合わせることで、高品質なデジタルコレクションの構築・公開が可能になります。本チュートリアルが、デジタルアーカイブの構築に取り組む方々の参考になれば幸いです。
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