IIIF Georeference Viewerにおいて、地理空間データの相互運用性を向上させるため、Linked Places Format (LPF) に準拠したデータ構造をサポートしました。本記事では、LPFの概要と実装の詳細について説明します。
Linked Places Format は、Pelagios Network が策定した地名辞典データの相互運用フォーマットです。GeoJSONを拡張し、Linked Data (JSON-LD) の概念を取り入れることで、異なるデータセット間での場所情報の共有・連携を可能にします。
LPFの特徴#
- JSON-LD互換 :
@id や @context を使用したセマンティックWeb対応 - GeoJSON拡張 : 標準的なGeoJSON構造を維持しつつ、メタデータを追加
- リンク機能 : 外部データセットへの参照を
links 配列で表現 - 時間情報 :
when プロパティによる時間的な情報の記述
公式仕様#
従来のフォーマットとの比較#
従来のフォーマットでは、metadata オブジェクト内に全てのメタデータを格納していました。これはシンプルですが、以下の課題がありました:
- 標準的なフォーマットではないため、他のツールとの相互運用性が低い
- Linked Dataとしての活用が困難
- 外部リソースへのリンクの種類(同一、類似など)を表現できない
新しい推奨フォーマット(LPF準拠)#
フォーマット設計の詳細#
@id の配置場所#
GeoJSON標準 (RFC 7946) とLinked Places Formatでは、識別子の配置場所が異なります:
| フォーマット | キー | 場所 | 用途 |
|---|
| GeoJSON標準 | id | Feature直下 | ファイル内での単純なID |
| Linked Places Format | @id | Feature直下 | RDF/Linked DataとしてのURI識別子 |
LPFの公式サンプルを確認すると、@id はFeature直下に配置されています:
title の配置場所#
LPFでは title は properties 内に配置されます。これはGISソフト(QGISなど)で読み込まれた際に、属性データとして情報が保持されるようにするための設計です。
links 配列#
links はFeature直下に配置され、外部リソースへの参照を表現します。各リンクは type と identifier を持ちます:
リンクタイプの種類#
| タイプ | 説明 | 用途例 |
|---|
exactMatch | 完全に同一のリソース | Getty TGN, GeoNames |
closeMatch | 類似するリソース | 他の地名辞典 |
primaryTopicOf | この場所についてのWebページ | Wikipedia, Google Maps |
subjectOf | この場所に言及するドキュメント | 歴史文献 |
seeAlso | 関連するリソース | 関連情報 |
実装の詳細#
型定義の更新#
ID解決の優先順位#
新旧両方のフォーマットをサポートするため、IDは以下の優先順位で解決されます:
ポップアップ表示の更新#
MapGL用のGeoJSON変換#
後方互換性#
既存のデータを壊さないよう、従来の metadata オブジェクト形式も引き続きサポートしています。新旧フォーマットが混在していても正しく動作します:
LPFを採用するメリット#
1. 相互運用性の向上#
LPFは地名辞典(gazetteer)間でのデータ交換を目的として設計されています。以下のようなプロジェクトとの連携が容易になります:
2. Linked Data対応#
@id を使用することで、各場所をURIで一意に識別でき、Linked Dataとして活用できます。これにより:
- RDFへの変換が容易
- SPARQLでのクエリが可能
- セマンティックWebへの統合
3. リンク関係の明示#
links 配列により、外部リソースとの関係性を明示的に表現できます:
- exactMatch : 「この場所はGetty TGNのこのエントリと同一」
- closeMatch : 「この場所はWikidataのこのエンティティと類似」
- primaryTopicOf : 「この場所についてはWikipediaのこの記事を参照」
4. GISツールとの互換性#
title や tags を properties 内に配置することで、QGISなどのGISツールで読み込んだ際に属性テーブルとして表示されます。
今後の展望#
時間情報のサポート#
LPFでは when プロパティで時間的な情報を記述できます:
将来的には、この時間情報を活用した時系列表示機能の追加を検討しています。
FeatureCollection レベルの @context#
完全なLPF対応として、FeatureCollectionレベルでの @context 指定もサポート予定です:
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まとめ#
Linked Places Formatの採用により、IIIF Georeference Viewerは地理空間データの相互運用性を大幅に向上させました。既存のデータとの後方互換性を維持しつつ、Linked Dataの概念を取り入れることで、より豊かなメタデータ表現と外部リソースとの連携が可能になりました。
歴史地理情報の研究や、デジタルアーカイブプロジェクトにおいて、異なるデータセット間での場所情報の共有・参照が容易になることを期待しています。
参考資料#